発達障がい者で孤独な男 日々の日記 怪奇体験

発達障害持ち、ボッチのカトリック信者。最近の出来事から子供の頃の話、不思議な体験を、その時の気分で綴っていきます。

Tさんにとって・・・②

先日、Tさんが、予想以上に早く別の病棟へ転棟された。

Tさんの転棟前日に、私の上司から連絡を受けた妹さんが来院された。今の開放病棟では転んで大けがする危険がある。そうなったら、年齢的にも寝たきりになってしまう危険もあると・・・Tさんを説得してもらうためだ。

私が夜勤で出勤した時、「あす転棟する」と聞かされた。

そして妹さんに、あることを連絡してほしいと言われた。

 

妹さんが来院された際、Tさんのオヤツを持ち帰ってもらうよう、渡し忘れたとの事だった。

「あなたがTさんの担当だったので、後で家族に連絡しておいて。それと今度の病棟では原則、オヤツやコーヒーは禁止であると、本人と家族に伝えてほしい」との事だった。

Tさんは毎日、3時にコーヒーとおやつを食べていた。ささやかな楽しみである。

今度行く病棟では、オヤツやコーヒーは食べられないことになっている。理由は食べられない患者も多いからか?

禁止・・・・少ない楽しみが更に少なくなる・・・こんなこと本人にどう説明しようか?本人の所へ行って説明した。残念がっていた。翌日は行かなくてはならない・・・

せめて身だしなみをと、以前から気になっていたTさんの伸びた爪を切ろうと思った・・

「大丈夫、自分でやります。」

多少、おぼつかないがご自分で切れる・・

「色々と・・・世話になったね・・一緒に様子を見に行ったけど・・・実際に生活しないと解らんしね。」

切れないところを私がフォローする。

Tさんは「ありがとね。まあ、向こうには知り合いもいるからね・・・」

夜勤の業務は忙しく、じっくり話は出来なかった。消灯時間までには本人は眠られていた。

その後、妹さんに連絡した。コーヒーも飲めないなんて、あまりにも可哀想だと、ずっと訴えられていた。

確かに私もそれは思っていた。妹さんの仰ることは尤もだと思う。何の楽しみもなく、しかも自分の意志に反して別の病棟に移らなくてはならないのだ。コーヒーくらい良いではないかと思う。

まずはご家族から、そうした強い要望があったということを上司に伝えることを約束した。

その後、日勤帯でTさんが行く病棟に掛け合って、毎日は無理だが、できるだけ希望に沿うようにすると約束することが出来た。御家族も承諾されて、その後、Tさんは転棟した。